キッチン短編
「それって・・・私たちはもう、必要ないってこと?」 ―どうしてわかってくれないんだ? 俯いたまま、小さな声で呟いたモレの言葉に、僕は思わず反論した。 「それはサンインとモレの方だろう? 僕にいったいどうしろというの? 動かなければ動けと言われ、…
はあはあ・・・。 あの店から少し離れた小さな公園まで来て、私たちはようやく走るのをやめた。 思いっきり走ってきたから、2人とも息が切れて呼吸が荒い。 すぐには言葉を発することもできず、はあはあと喘いでいると、 くすくす・・・・。 ドゥレが急に…
今日もまた帰ってこない。 がちゃ、がちゃ。 お日様が昇るのと同じくらいに、扉を開く音が聞こえる。 私はベッドを這い出すと、仁王立ちになって彼を迎えた。 「また朝帰り?」 「・・・ああ、悪い。起こしちゃった?」 「ドゥレが帰ってこないから、心配で…
くすくす・・・。 ちょっとバカにしたようなすました笑い。 それにムッとして「なによ。」と膨れると、うれしそうに私をからかう。 「もう知らない。」 そう言って顔を背けると、いきなり子供みたいに淋しそうな顔になるから、 また胸の奥でドキドキが止ま…
「・・・ジュレ。」 布団の外から、もう一度ドゥレの声が聞こえた。 ふわりと優しい重力が、布団の上にかかる。 「顔を見せて。」 ドゥレにそう言われても、布団を自分から上げることなんてとてもできなかった。 すると、ドゥレはそっと布団のはじをめくっ…
―ジュレ、熱を出しちゃって・・・明日、約束していたけれど、行けないって・・・。 携帯から聞こえるモレの声に、僕は驚いてサンインの家へ向かった。 デートの約束をしても、行けなくなることはある。 だけどジュレは、今まで一度だって、他の人に断りの電…
「どうしたの?」 俺はムン・ヘギ。警官だ。 先月めでたく、念願のソウル市地方警察庁捜査課に配属されたのに、 いきなり人手が足りないからと言われて、清渓川の灯篭祭りの警備に回された。 やっと制服を脱ぐことができたって言うのに、 配属されて初めて…
台風が吹き荒れるある日、私はドゥレと二人で家でお留守番。 アッパとオンマは遠出した先で、この台風で足止めを食らっていて今日は帰って来られない。 ドゥレパがいるからさびしくないけれど、何もすることもなくて、 私はなんとなくぼんやりと風雨が打ち…
[今日は保育園に行くのはイヤ!」 ツンとした冷たい空気の朝、ジュレの声が部屋に響いている。 もう保育園に行く時間だと言うのに、珍しく愚図っているジュレに僕は声をかけた。 「どうしたの?」 洗ったばかりの顔をタオルで拭きながら、ジュレを見ると、 …
「ジュレちゃんお迎え来たわよ。」 先生が私を呼ぶ。 パンダのぬいぐるみを抱きながら振り返ると、 「ジュレ!」 満面の笑みをたたえて、ドゥレパが手を振っている。 だから、ぬいぐるみを放り出して、私は駆けだして、彼の胸に飛び込むの。 「ドゥレパ!」 …
「ただいま。」 ジュレを寝かしつけて、ホッとサンインとひと息ついていると、 思ったより早くドゥレが帰ってくる。 少し不機嫌に帰ってきたドゥレの頬が、真っ赤に腫れあがっていて、 2人で顔を見合わせる。 「どうしたの!?」 「・・・別に。」 「今日は…