大切なものは心の中に

チュジフン主演「キッチン」を中心とした作品の2次小説書庫です。

キッチン短編

太陽の憂い~4(最終話)

「それって・・・私たちはもう、必要ないってこと?」 ―どうしてわかってくれないんだ? 俯いたまま、小さな声で呟いたモレの言葉に、僕は思わず反論した。 「それはサンインとモレの方だろう? 僕にいったいどうしろというの? 動かなければ動けと言われ、…

太陽の憂い~3

はあはあ・・・。 あの店から少し離れた小さな公園まで来て、私たちはようやく走るのをやめた。 思いっきり走ってきたから、2人とも息が切れて呼吸が荒い。 すぐには言葉を発することもできず、はあはあと喘いでいると、 くすくす・・・・。 ドゥレが急に…

太陽の憂い~2

今日もまた帰ってこない。 がちゃ、がちゃ。 お日様が昇るのと同じくらいに、扉を開く音が聞こえる。 私はベッドを這い出すと、仁王立ちになって彼を迎えた。 「また朝帰り?」 「・・・ああ、悪い。起こしちゃった?」 「ドゥレが帰ってこないから、心配で…

太陽の憂い~1

くすくす・・・。 ちょっとバカにしたようなすました笑い。 それにムッとして「なによ。」と膨れると、うれしそうに私をからかう。 「もう知らない。」 そう言って顔を背けると、いきなり子供みたいに淋しそうな顔になるから、 また胸の奥でドキドキが止ま…

親愛なる人へ~2

「・・・ジュレ。」 布団の外から、もう一度ドゥレの声が聞こえた。 ふわりと優しい重力が、布団の上にかかる。 「顔を見せて。」 ドゥレにそう言われても、布団を自分から上げることなんてとてもできなかった。 すると、ドゥレはそっと布団のはじをめくっ…

親愛なる人へ~1

―ジュレ、熱を出しちゃって・・・明日、約束していたけれど、行けないって・・・。 携帯から聞こえるモレの声に、僕は驚いてサンインの家へ向かった。 デートの約束をしても、行けなくなることはある。 だけどジュレは、今まで一度だって、他の人に断りの電…

犬のおまわりさん

「どうしたの?」 俺はムン・ヘギ。警官だ。 先月めでたく、念願のソウル市地方警察庁捜査課に配属されたのに、 いきなり人手が足りないからと言われて、清渓川の灯篭祭りの警備に回された。 やっと制服を脱ぐことができたって言うのに、 配属されて初めて…

チョコレートとキャラメル

台風が吹き荒れるある日、私はドゥレと二人で家でお留守番。 アッパとオンマは遠出した先で、この台風で足止めを食らっていて今日は帰って来られない。 ドゥレパがいるからさびしくないけれど、何もすることもなくて、 私はなんとなくぼんやりと風雨が打ち…

Family of Santa Claus

[今日は保育園に行くのはイヤ!」 ツンとした冷たい空気の朝、ジュレの声が部屋に響いている。 もう保育園に行く時間だと言うのに、珍しく愚図っているジュレに僕は声をかけた。 「どうしたの?」 洗ったばかりの顔をタオルで拭きながら、ジュレを見ると、 …

ドゥレパのパ

「ジュレちゃんお迎え来たわよ。」 先生が私を呼ぶ。 パンダのぬいぐるみを抱きながら振り返ると、 「ジュレ!」 満面の笑みをたたえて、ドゥレパが手を振っている。 だから、ぬいぐるみを放り出して、私は駆けだして、彼の胸に飛び込むの。 「ドゥレパ!」 …

蝶のように。

「ただいま。」 ジュレを寝かしつけて、ホッとサンインとひと息ついていると、 思ったより早くドゥレが帰ってくる。 少し不機嫌に帰ってきたドゥレの頬が、真っ赤に腫れあがっていて、 2人で顔を見合わせる。 「どうしたの!?」 「・・・別に。」 「今日は…