大切なものは心の中に

チュジフン主演「キッチン」を中心とした作品の2次小説書庫です。

ロードムービー

ロードム―ビー 最終話

昨日の夜、ジュレがどうしたのか気になりつつも、そのまま一人にさせた。 今朝、どんな顔で起きてくるのか、少し心配だった。 でもジュレは、今朝はドゥレよりも早く起きてきた。 「おはようございます。」 「・・・おはよう。」 「先にシャワー浴びてきま…

ロードムービー その11

号泣する私を、マリーはギュッと抱きしめる。 私はマリーに救いを求めるように、その手にギュッとしがみついた。 どうすることもできない心に、胸が痛くて、苦しくて、 私はただただ、声を上げて泣いた。 行き場のない心が暴れている。 そんなの嫌だと。 こ…

ロードムービー その10

ドゥレパへの切なさと愛おしさがどんどんあふれてくる。 私は机の上を見ていることができなくて、 視線をベッドに逸らすと、 その壁に飾られた見慣れた3人の若い写真と 真っ黒な写真が目に入った。 「?」 額に入ったその小さな写真に、ベッドに乗って顔を…

ロードムービー その9

「あの頃のドゥレのこと・・・。」 マリーは少し考えた後、自分の部屋に戻ると小さなアルバムを持って戻ってきた。 「これは?」 マリーに手渡されたそのアルバムを開いて見ると、小さな男の子と、大きな男の人の写真があった。 「これ・・・ドゥレパ?」 …

ロードムービー その8

私たちは、ひとしきりパリの街を楽しんだ後、夕食にはマリーの家に戻った。 堅苦しいレストランで、緊張して食べるより、 マリーの料理の方がずっとおいしくて、楽しかった。 マリーは相変わらず言葉少なだったけれど、私たちは食事をしながら、たわいもな…

ロードムービー その7

「街並みを楽しむのもいいけれど、ショッピングはしなくてもいいの?」 「え?」 「ほら、おみやげとかさ、買うんじゃないの?」 「・・・だって、そういうの、ドゥレパ好きじゃないし・・・。」 「そんなことを、ジュレが気を遣わなくていいの。 ほら、こ…

ロードムービー その6

「少し付き合って。」 ドゥレパは横道にそれると、まっすぐ公園のような場所へ入って行った。 ―墓地? シンと静まり返った空間をドゥレパはまっすぐ奥に進んでいく。 そして、一番奥の大きな木の下に置かれた石碑の前に止まった。 「・・・?」 私はドゥレ…

ロードムービー その5

「う~んっっ!」 窓の差し込む光の眩しさに、私は目を覚ました。 頭がすっきりして、気持ちのいい朝。 ・・・あ? 今自分がどこにいるのか一瞬迷う。 マリーの家であると思い出して、あわててベッドから起き上がった。 そして向かいにある鏡に映る自分の姿…

ロードム―ビー その4

暖炉の火を見ながら一息つく。 「マリー思ったよりも元気そうでよかった・・・。」 ジュレについてパリに来たのは、他にも理由がある。 ジュレがパリに行くと宣言する2週間ほど前に、ジャニスからの手紙を受け取っていた。 ドゥレへ よう、元気でやってい…

ロードムービー その3

マリーの家は、どっしりとしていて、何もかもが重みを感じる。 家もかなりの年代物の韓屋だけど、ここはそんなのは問題にならないほどの時の流れを感じる。 長い時間ずっと同じ場所に留まり続けた物の重みが、この家の空気を作っていた。 隅々まで手入れを…

ロードムービー その2

「まるで住んでいる人みたい。」 「本当に住んでいたんだもん。 この街だって、僕が働いていた店もあるし、住んでいたアパートだってある。 この街全体が僕の生活の場だったんだから、あたりまえだろう?」 「・・・。ねえ、マリーさんの家に行く前に、ちょ…

ロードムービー その1

カシャッ、カシャッ。 レフ板が私に光を集め、カメラマンがシャッターをせわしなく切る。 私はその真ん中で、肩の大きく出た春色のワンピースを着て、ポーズをとる。 ふんわりとしたシフォンの生地が、私の仕草でふわふわと揺れる。 今は2月。ただ今のパリ…