ロードムービー
昨日の夜、ジュレがどうしたのか気になりつつも、そのまま一人にさせた。 今朝、どんな顔で起きてくるのか、少し心配だった。 でもジュレは、今朝はドゥレよりも早く起きてきた。 「おはようございます。」 「・・・おはよう。」 「先にシャワー浴びてきま…
号泣する私を、マリーはギュッと抱きしめる。 私はマリーに救いを求めるように、その手にギュッとしがみついた。 どうすることもできない心に、胸が痛くて、苦しくて、 私はただただ、声を上げて泣いた。 行き場のない心が暴れている。 そんなの嫌だと。 こ…
ドゥレパへの切なさと愛おしさがどんどんあふれてくる。 私は机の上を見ていることができなくて、 視線をベッドに逸らすと、 その壁に飾られた見慣れた3人の若い写真と 真っ黒な写真が目に入った。 「?」 額に入ったその小さな写真に、ベッドに乗って顔を…
「あの頃のドゥレのこと・・・。」 マリーは少し考えた後、自分の部屋に戻ると小さなアルバムを持って戻ってきた。 「これは?」 マリーに手渡されたそのアルバムを開いて見ると、小さな男の子と、大きな男の人の写真があった。 「これ・・・ドゥレパ?」 …
私たちは、ひとしきりパリの街を楽しんだ後、夕食にはマリーの家に戻った。 堅苦しいレストランで、緊張して食べるより、 マリーの料理の方がずっとおいしくて、楽しかった。 マリーは相変わらず言葉少なだったけれど、私たちは食事をしながら、たわいもな…
「街並みを楽しむのもいいけれど、ショッピングはしなくてもいいの?」 「え?」 「ほら、おみやげとかさ、買うんじゃないの?」 「・・・だって、そういうの、ドゥレパ好きじゃないし・・・。」 「そんなことを、ジュレが気を遣わなくていいの。 ほら、こ…
「少し付き合って。」 ドゥレパは横道にそれると、まっすぐ公園のような場所へ入って行った。 ―墓地? シンと静まり返った空間をドゥレパはまっすぐ奥に進んでいく。 そして、一番奥の大きな木の下に置かれた石碑の前に止まった。 「・・・?」 私はドゥレ…
「う~んっっ!」 窓の差し込む光の眩しさに、私は目を覚ました。 頭がすっきりして、気持ちのいい朝。 ・・・あ? 今自分がどこにいるのか一瞬迷う。 マリーの家であると思い出して、あわててベッドから起き上がった。 そして向かいにある鏡に映る自分の姿…
暖炉の火を見ながら一息つく。 「マリー思ったよりも元気そうでよかった・・・。」 ジュレについてパリに来たのは、他にも理由がある。 ジュレがパリに行くと宣言する2週間ほど前に、ジャニスからの手紙を受け取っていた。 ドゥレへ よう、元気でやってい…
マリーの家は、どっしりとしていて、何もかもが重みを感じる。 家もかなりの年代物の韓屋だけど、ここはそんなのは問題にならないほどの時の流れを感じる。 長い時間ずっと同じ場所に留まり続けた物の重みが、この家の空気を作っていた。 隅々まで手入れを…
「まるで住んでいる人みたい。」 「本当に住んでいたんだもん。 この街だって、僕が働いていた店もあるし、住んでいたアパートだってある。 この街全体が僕の生活の場だったんだから、あたりまえだろう?」 「・・・。ねえ、マリーさんの家に行く前に、ちょ…
カシャッ、カシャッ。 レフ板が私に光を集め、カメラマンがシャッターをせわしなく切る。 私はその真ん中で、肩の大きく出た春色のワンピースを着て、ポーズをとる。 ふんわりとしたシフォンの生地が、私の仕草でふわふわと揺れる。 今は2月。ただ今のパリ…