ひらり。ひらり。 薄紅色の花びらが緩やかに回りながら落ちていく。 可憐な舞いに、思わず手を伸ばすけど、 僕の掌をかわすように、ふわりとターン。 慌てて追いかけるけど、それらは軽やかに僕の掌をすり抜けて、 ふふふと笑いながら地面に舞い落ちる。 ー…

「子狐」は俺の手を握ったまま、赤いレンガの家に一目散に駆け込む。 カララン。 扉を開けると、呼び鈴と音とともにふんわりと温かい空気に包まれた。 「いらっっしゃいま・・・あ、テソン？」 「ハルっ！アッパは？」 「ああ！！なんだよその格好！ビショビ…

どんよりした雲が広がり、白い綿ぼこりのような雪が空から舞い落ちる。 「ああ・・・。」 鉛が胸にドスンと落ちたように、やるせない気持ちが口から漏れだす。 白いベンチに腰掛けたまま、もうどれくらい経つだろう？ このまま石のように心も身体も固まって…

山道を外れ、木々の間を抜けると ザーッと風が吹き抜ける。 空は青く、雲はゆっくりと流れて、 目の前に一面の黄色い斜面が広がっていた。 目に鮮やかな黄色い花の群れ。 たおやかな香りが漂う。 彼女はそれに誘われるように花たちの間を分け入り、 そして誰…

「うう、寒い。」 北風にびゅっと吹かれて、庭の木からなけなしの葉が舞い落ちる。 見上げれば空はどんよりとした雲が覆い、今にも白いものが落ちて来そうだ。 ハルはぶるっと身を震わせると、 箒とちりとりをそそくさと片付け、店の中に入って行った。 「ハ…

さくら、舞い散るー 空を覆い隠すように、無数の白い花が咲き乱れる桜並木の下を、僕は駆けていく。 小さな花びらの踊り子はひらひらと舞い、僕の頭や肩に横たわる。 掌を高く掲げ彼女たちを掬うと、掌の中で恥ずかしそうにフルフルと震える姿が可愛かった。…

ようやく完了しました。 ああ、つかれたぁ(^^) スタート当初は、こんなに長くかかるとは思っても見ませんでした。 「メディカルトップチーム」「結婚前夜」「渡韓」「MV」と、 あっちこっち寄り道しまくって、 あれ？未完のまま終わっちゃうかも・・・と、…

彼女はばつが悪そうに苦笑いを浮かべたけれど、 その笑みにはやさしさが溢れていて、 ホッとしたような寂しいような妙な気分に、心がもぞもぞする。 「今は幸せなんだね？」 「・・・そうね、そういうことなのかもね。」 彼女は仕方ないというように眉を顰…

「だからあんたのこと大嫌いなのよ。」 それは彼女の昔からの口癖。 その一言に、彼女の気持ちが込められていたこと、 今ならわかってあげられるのに。 「双子たちは？今はどうしているの？」 「ああ。相変わらずよ。 ま、あいつらなりに頑張って、父さんの…

ことり。 小さな音とともに、芳ばしい薫りが鼻をくすぐる。 我に返ると、目の前で鳶色の深い色をしたコーヒーが白い湯気をゆらゆらと立ち上げていて、 見上げると、ドゥレが忌々しい笑顔で笑った。 「！」 ー本当に・・・こいつは人の神経を逆撫でするのが…

ハナが自分の前から黙って消えたことに気がついた僕は、あの頃本当に凹んでいた。 「一緒に飛ぼうって約束したのに・・・。」 彼女の柔らかな唇の感触が、まだ唇に残っていて、 あの日のことを、幻にも思い出にもできないままでいた。 「あ～！！もう！女に…

「本当にあんたって、イヤミな男ね。」 そう言って苦々しい顔で座るハナと、 苦笑しながらも、嬉しそうにそれを見ているドゥレ。 ２人の間に何があったのか、僕には知りえないことだけど、 彼女がドゥレの昔の想い人だということは、何となくわかった。 「…

脳内変換、よろしくお願いします（笑） エレベーターを降りると彼女はドゥレから身体をさっと離し、いつものハナに戻っていて、 ドゥレは少しだけ残念に思ったけれど、 急にべたべたするよりも、そのほうがずっと彼女らしいと思った。 「ああ。地上に戻って…

「ちょ、ちょっと待って・・・よ！」 「何？」 意気込んでずんずん歩いてくドゥレを引き止めると、彼は不思議そうな顔で振り返って。 ーこらっ！なんて顔してこっちを見るのよっ！ どんぐりみたいにまん丸な瞳がキラキラ光っていて、まともに目を合わせられ…

「！！！」 暗闇に僕を見つめる瞳。 いつからだろう？ その瞳は、眠る彼女の向こう側で、身体を起こして静かに僕を見つめていた。 見られてはいけないものを見られてしまった罪悪感に、身をすくめる。 でも、怒ることも悲しむこともせず、ただ、黙って見つ…

ー僕の記憶が全て消えても、生まれ変わってまた、あなたを探し出すから。 青白い月明かりが部屋を包む夜― 不意に僕は目を覚ました。 ―誰だ？僕を呼び起こすのは？ 目が覚めると、真っ暗な闇の中で、 僕は息をひそめて起き上がる。 気だるさの中、周りを見回…

「おまちどうさま。」 ほどなく厨房から出てきたドゥレは、鼻歌交じりにやってくるとハナの前に皿を置いた。 「・・・これ・・・は？」 皿の上には、半月上のぽってりとしたオムレツのようなものが載っている。 ーお菓子・・・？料理・・・？ いつも食べる…

はぁはぁ。 息を切らしてドゥレは店の前まで駆けてくると、 一息ついて呼吸を整える。 逸る心を抑えて扉を開けると、 カウンターでやきもきしているジニョクと目があった。 「オーナー？」 何があったのかと目で窺うと、 ジニョクは黙って顎をしゃくって促…

「きゃっきゃっ。」 小さな子と戯れるように笑い声が聞こえる。 「ジュレは本当に可愛いなぁ。」 リビングでは、ドゥレとジュレがじゃれ合っていた。 1歳になったばかりのジュレは、 拙い足でフラフラと2、3歩歩いてごろりと寝転ぶドゥレの胸に飛び込むと、…

本当にどうしてすぐ、あんな風になっちゃうんだろう。 ー・・・あ、ありがとうって言うの忘れた。 ハナは、自分の拳でこつりと頭を叩くと、深いため息をついた。 昼間のこと、本当はものすごく怖かった。 でも、怖いって気がつかれたくなくて、気持ちを奮い…

「じゃあ、ソヌさんまた明日ねっ。」 双子たちを急きたてながら、さっきとは打って変わった明るい声で、 窓越しに厨房のソヌに手を振り店を出ていくハナを横目で見送った後、 ドゥレは珍しくカウンターに頭を預けて、不貞腐れていた。 店には２、3人の客が…

車が走ってからも、ドゥレは笑いが止まらなくてずっと笑っている。 「ッププ。・・・ハナさんたら、本当に赤の女王みたいだった。」 「うるさい。」 ハナはチッと舌打ちして彼を睨むけど、やっぱりそれを笑うから、顔を背けて不貞腐れを決め込んだ。 ―本当…

「ユ・ハナ。あんた、いい加減にしなさいよ。」 「なんのこと？」 下校途中に急に呼び止められたハナは、そのまま3～4人の同級生に囲まれたまま、 路地に連れ込まれた。 「あんた、今日、イナクに恥をかかせたでしょう？」 さらりとした長い髪の子に言われ…

にぎやかな店内。今日も様々な人々が、幸せを求めてケーキを買いに来る。 次々とケーキを注文するお客をさばきながら、ジニョクはちらりと喫茶室に目をやった。 同じ顔した男の子が向かい合って、分けあったケーキを嬉しそうに食べている。 その様子があま…

鉄砲玉のように飛び込んだと思ったら、 近寄るものすべてに、爪を立てている感じのハナのおかげで、店の雰囲気がピリピリと張り詰める。 ケータリングから帰ってきたドゥレも店に入ってくるなりの雰囲気に、驚いて遠くから様子を窺う。 女子高生にいいよう…

ーああ・・・そうだ。 あれは、僕がアンティークに働き始めて間もない頃だ。 「お前。いくら持ってる？」 「2000ウォン。」 「俺は3000ウォンだから、全部で5000ウォンだ。うん、このケーキ買えるな。」 「うん、買える。」 「じゃあ買うぞ。」 「半分こだ…

夏の風が庭の草木を揺らして吹き抜けていく。 ドゥレはたばこの煙を吐いて、なんとなく空を見上げた。 青い空を、白い綿あめのような雲が流れていくのが見える。 その雲に合流させるかのように、彼は煙草の煙を空に向かって吐き出した。 たったっ。 かわい…

「ちぇっ。」 ジヌはなんとなく気恥ずかしくなって、鼻の頭をポリポリと掻く。 「・・・もういいよ。知りたいことはわかったから。 義誠君には、もっと勉強して・・・彼と専門の話ができるようになったら逢いに行く。 ・・・父上と一緒にね。」 ジヌはそう…

―もう、我慢の限界だ！ 「・・・っ！」 朗らかな笑い声のするテーブルに一歩踏み出そうとしたとき、 その気持ちをはぐらかすように背後から肩を叩かれて振り返ると、 いつの間に階段を登ってきたのか、デザートを乗せた盆を片手に持ったドゥレが立っていた…

「え？」 思いもしなかった言葉に、ハルはワインのボトルを持ったまま目を丸くする。 チェギョンも驚いてシンを見た。 「何が気に入らないの？ワイン？料理？ 私はとってもおいしいと思うんだけど、・・・もしかして？」 「ワインも料理も完璧だ。」 「それ…