大切なものは心の中に

チュジフン主演「キッチン」を中心とした作品の2次小説書庫です。

En premier amour

En premier amour~12~(最終話)

再び瞳を開けた時、私はひとり家のリビングのテーブルに眠っていた。 ただ、ドゥレといた時と同じような、金色の陽が部屋を染め上げていた。 庭の向こうに輝く夕陽に目を細める。 「夢・・・だった?」 私はゆっくり顔を上げ辺りを見回すけれど、そこはどう…

En premier amour ~11~

「あ・・・今何時?」 ドゥレが急に時間を聞く。 私は、きょろきょろとあたりを見回すと、街灯の一つに、時計がついているのを見つけた。 「5:00・・・かな?」 「間に合うかも・・・。」 そう言うと、ドゥレはスクーターに跨り、私に乗るように促した。 …

En premier amour~10~

必死でスクーターを走らせた。 最初は聞こえていた彼らの罵声もそのうち聞こえなくなったと思ったら、 突然ドゥレが大笑いするから、驚いた。 その笑い声を聞いたらなんだか私もおかしくなって、笑いだしたら止まらなくなった。 さっきまであんなにイライラ…

En premier amour ~9~

そんなことは、すぐに後悔していた。 飛び出てすぐ冷静になって考えたら、とんでもないことをしたと青くなった。 たった一つの頼みの綱だった、ドゥレの手を自ら離すなんて! ―バカ!ジュレのバカ! あんたは本当に大バカ者だわ! もしドゥレが怒って帰って…

En premier amour~8~

気まずい沈黙が続く中、ただあてどもなく2人で歩く。 楽しげな遊具にも目もくれず、ただ通り過ぎるだけ。 ティアラ・・・すごくうれしかった。 あんなふうに、ドラマチックに贈り物をしてもらったことなど初めてだったから、 本当にドキドキしてわくわくし…

En premier amour ~7~

「あれは何?」 「あの建物きれい!」 「あそこの店に飾ってあった、洋服すごくかっこいい!」 次々と目の前に飛び込んでくる景色を、夢中になって見ていると、 その度に、ドゥレがおかしそうにそれに答えてくれた。 前方に大きな丸いものが現れる。 「あ!…

En premier amour ~6~

トゥルルル・・・。 突然携帯電話が鳴って、心地良い静寂が壊れる。 僕は慌てて電話に出ると、同居している友達のアントンの声が聞こえた。 「おい、どこにいるんだ?俺が頼んでいた本はいつ来るんだよ?」 ―忘れていた。それを届ける途中だったんだ。 僕は…

En premier amour~5~

「で、遊ぶって何をするの?」 「う~ん、何って言われても、私はこの街のことよくわからないし・・・。 ドゥレのお勧めの場所に連れて行ってよ。」 自分から誘っておいたくせに、私は彼に丸投げする。 「おすすめねぇ・・・。」 ドゥレは少し考えた後、何…

En premier amour~4~

《ジャン=バティスト・エヴァン》 もし、本当に21年前なら、もしかしてまだソヌさんがこの店にいるんじゃないかって、 私は好奇心いっぱいで店内をきょろきょろした。 店の中は、この間ドゥレパと入った時とあまり変わったような感じがしない。 伝統を守る…

En premier amour~3

「あ、名前を聞いていなかったね。」 「私は、アン・・・。」言いかけて、迷った。 自分の本当の名前を言ったりしたらまずいような気がしたから。 「アン?」 「・・・う、うん。」 ドゥレは少し考えて、ニヤッと笑うと、 「ふ~ん・・・じゃあ、きみはアン…

En premier amour~2

「ドゥレ・・・パ?」 違うに決まっているのに、思わず声に出てしまう。 なのに、その子は驚いて、 「・・・何で僕の名前を知っているの?」と訊いた。 「え・・・?」 「見たところ、確かに韓国人みたいだけど、僕らはどこかで会ったことある?」 彼は不審…

En premier amour~1~

「ああ・・・つまんない。」 ドゥレパにデートをドタキャンされた、気だるい午後。 私はひとり家で、ぼんやりと窓越しの庭を眺めていた。 「自分で誘っておいて、急に行けないなんて! もっと早く言ってくれたら、ミンスたちと映画に行けたのに・・・。 私…